マイナビミドルシニア座談会:「人生100年時代、仕事人生80年時代」

100歳時代と言っているけど、100が壁になっちゃまずいね。
それより、100歳をいかに通り越すかっていうことだね(笑)。

6/3、うぇるねす新宿本社において、マイナビミドルシニア主催の座談会が開催されました。ゲストは、ライフシフト大学CEOの徳岡様と弊社代表の下田に、マイナビミドルシニアからは代表の道上様が参加。人生100歳時代における働き方、学び方の有り様が示され、ピンピンコロリを筆頭に、有意義な論戦が繰り広げられました。

◎まず、徳岡先生は「ライフシフト」が世界的キーワードになると。貴学では「80歳現役時代」を提唱されています。

徳岡  日本の平均寿命は女性87歳台、男性81歳台ですが、最多死亡年齢は女性93歳、男性87歳とさらに上で、実際は5年で1歳ぐらいずつほぼ直線的に延びているんです。
ただ、日本のシニアの人たちは定年を迎えたら、もうすでにリタイア気味ですし、高齢化に伴って病気、貧困、孤独という3つの悩みに関心が向いて行く。社会にも高齢者活用の仕組みがなくて、今後の大きな課題になっているんです。
でもこれ、非常にもったいない状態なんですね。
日本が率先して人生100年を実現していこうというわけなんで、80歳までは現役というのが大事でしょう。世界も注目しているので、我々大学としても使命感をもって背中を押していきたいですね。

ライフシフト大学CEO 徳岡晃一郎氏


◎ピンピンコロリ、受け入れる側の企業としてはどうお考えでしょうか。

下田  うちの管理員さん2000人の高齢者は全員ピンピンコロリ。僕はその自称、会長でね。病気になったり、寝たきりになったり、介護になったりは許さないって言っているんですよ(笑)。
80歳になったんで、家族に言われてそろそろ仕事辞めようかと思ってた人がね、僕にそう言われてやっぱり頑張りますって、みんな言ってくれるんです。つまり、自分がどう思うかってこと。それが大事ですね。

道上  シニアミドルの就職支援というのも注目されてたんですけれど、コロナが起きて事態は一変してしまいました。
高齢者は外出を控えるし、高齢者活用が進んでいた企業には職場を失った若者たちが入ってきて、高齢者向けの職場が狭まってしまいましたね。そこで、この世の中が再び動き出す中で、前向きに行ってほしいなと思います。

マイナビミドルシニア代表 道上良司氏

◎うぇるねすの言うシニアとITの融合ですが、親和性が困難ではないかと。それを掲げられる理由は何ですか?

下田  年齢の差ってないんですよ。実際、今まで使ってなかった人もみんなすぐ使えるようになった。全然大したことない。
80過ぎてスマホなんて使えるわけがないって世の中が思い込んでいる。でも、やる気があったら、生きている限りはすぐ使えるようになるんですね。

徳岡  特に、デジタルって、今、ユニバーサルデザインですごく進んできているので、逆に高齢者向きっていうことはあると思うんですよね。

道上  コロナで、今までスマホに接点のなかった高齢者世代の皆さんたちが、ご家族との連絡に使うようになって、普及はぐっと進みましたね。

徳岡  高齢者の方って難しいし、面倒くさい人も多いし。ちゃんとシステムで枠組みを示されて、あとはボタン押して選べばいいだけという方が、活用しやすいと思いますね。

◎働き方がフレキシブルに変革する中で、うぇるねすではどのように働いてほしいですか?

下田  その人に合った働き方ってことですよ。だから、80~90代でも週6日フルに働きたいっていう人もいるし、週2~3日とか午前中だけとか希望はあるので、そんな働き方を提供する仕組みを開発してきていますよ。
そこで、僕が一番気に入らないのが、定年制っていう制度でね。一律なんておかしいし、人に決められるものでもない。それに定年っていうと、その気になって急に衰えるんです。もう全部禁止してほしいね。

道上  ようやく去年4月、高齢者雇用の法律で70歳までの努力義務っていうところまでは改正しましたけどね。

下田  それがケチくさいんだよね。

道上  ところで先生に伺いたかったのが、昨今、高齢者の方が会社に居座られると若者世代の雇用機会が失われるじゃないかっていう声があるんですが…。

徳岡  それは、要するに1つの仕事の取り合いをして競争するからなんです。ゼロサム・ゲーム。ほんとは、もっと考えていくと新しい仕事もちゃんと生まれてきて、シニア向きかもしれないんだけど、今まで定年というシステムで回っていたので未開拓なんですよね。
一方、シニアがもういいやと学び直さないので、劣ったまま居座って、結局、口ばっかりで手足が動かないとなってしまう。
ですから、シニアは「上がった」と思わないように心がけるのが大事でね。自分たちの経験や知恵をもっと発揮できるはずですから、それを磨いていけばいいと思いますね。
ただし、そこに定年の呪縛がある。もうゴールだって思うと脳みそって働かなくなって、それできちゃった人が大量に溜まってしまった。
いわゆる「粘土層問題」、組織の上の方に粘土のような岩盤を形成してしまっている。それを崩していくにも、学び直しから始めてもらいたいということなんです。

道上  そこは、企業側に仕事を作ってもらうというのもありますね。

徳岡  企業の中でも、これからは大きな戦略テーマになってきます。そうすると、新しい働き方とか雇用の未来を含めて、企業の中だけでは解決できないことにもなるでしょう。

うぇるねす代表 下田雅美

◎海外に行かれて日本は大変遅れているなとお感じになった下田さんに、専門的に働く大切さをお聞きしたい。

下田  難しい質問だね。
自分の訪米体験で言うと、マンション事業をアメリカと比べて、管理員さんの存在感が全然違うなっていうのに驚いたんです。一言で言えば、すごく尊敬されている。
非常に博学で知識も地域の情報も本当によく知っていて、何かあったらみんな管理員さんに相談に行く。やっぱり100年、200年の歴史があって、そういう文化ができているんです。
だから、管理事務室にいて新聞読んでという日本の管理員さんのイメージをぶちこわしたい。うちの管理員さんは違いますよ。きちんと教育もしているし挨拶も万全だし、そうなると、70代、80代…100歳になってもみんなに尊敬されて信頼される。
逆に、そういう仕事は本来、年寄の方がいいんですね。うちの2000人の管理員さんたちが全部、尊敬され信頼されたりする存在になっていけば、年寄りってすごい、ずっと優秀だし元気じゃないかと、そういう評価がだんだん出てくるとイメージが変わるんじゃないですか。

道上  我々は求人情報を扱っているんですけど、考え直した方がいいと思うことがありましてね。
マンション管理員は不動産を維持する者というのがある種固定概念になっていて、生活情報の提供者という位置付けにまったくなってないんです。
一部には出てきた、コンシェルジュのようにもう一度定義付けをすれば随分形も変わってくるだろうし、都心部に多いコミュニティ問題に対しても、中心的な役割を管理員さんが果たせるようになると随分世の中も変わると思いますね。

下田  そうね。日本のマンションって、まだ50年ぐらいだからね。僕もそういう業界にいたんだけど、不動産会社は1戸分所有マンションっていうのを箱としてしか見てなくてね。そこに人間が入っているっていう発想がないわけよ。
でも、海外は逆。人がメインだっていうことで、箱は修繕すればいいじゃないかと100年以上もつような修繕ノウハウが進んでいる。

徳岡  スペインなんかだと、シニアの人たちはいろんな経験とか知恵を持っているから、住人が地域の人を含めてみんなを生かしていくコミュニティづくりをしている。
そういう役割を、シニアにはもっと持ってもらうといいと思いますよね。

◎シニア世代には、もっと持っている知恵を発揮して働く、貢献するっていうことができそうだということでしょうね。

徳岡  人生100年現役で、ピンピンコロリでずっといくっていう想定でいくとね。やっぱり学び直しを続ける心構えというか、「終身知創」、終身雇用ではなくて知を創造するっていう、これだと思いますね。
社会がどんどん変わっていく中では、学び直しながら、自分の役割を持ってどう責任を果たし貢献していくのかが大事で、特に今デジタルの変化が激しいから、ちょっと油断するとすぐ置いていかれちゃう。それを、やっぱり必要だと思い、社会にも負担をかけないようにというわけですよ。
結局、自分がゆくゆく高齢化していく中でいい高齢化社会を作るためには、高齢化していっている自分自身が主体になっていかないといけない。やっぱり学び直しを続けるのは原点なのかなと思います。

下田  先生がおっしゃったのと同じかもしれない。
自分がやりがいを求めて、何に向かってどういう目標を達成したいのか、いつも持っておく。そして、その目標をいつも新しくすればよくて、これやりたい、あれやりたいって思っているうちはいつも元気で若々しいじゃないですか。で、もう満足って思ったときは、あの世に行けばいいんじゃない?これが、ピンピンコロリの流儀だね。
だから、今、僕が100歳時代と言っている、その100が壁になっちゃまずいなってこと。100をいかに通り越すかっていうね。まだまだやりたいって思っている方が突然コロッと行くんですよ。ピンピンコロリの極意だね。

徳岡  その方が確かに自然かもしれませんね。そういう意味でも、やっぱり健康は大事。コロナもあって、なんとなくまったりしている。だからもう一度、外に出る楽しさを思い出して、もう一回健康づくりに気をつけていく。それが大切ですね。

下田  働くにしても、人間はね、やる気でやっていると自分の生命力とか自己免疫力がものすごく強くなるんです。

徳岡氏「人生100年現役でいくという想定では、学び直しを続ける心構えが必要。つまり「終身知創」。終身雇用ではなくて知を創造するっていう、これだと思いますね。

道上  そこでいうと、企業サイド側の体制準備が整い切れてないですね。
特に、我々が取り組んでいかないといけない相手は、経営者でしょうか。高齢者活用に対しては、実は非常に積極的なんですよ。これからの労働人口の変化を捉えれば、経営者の方々も不安になってらっしゃる。ところが、むしろ現場が反対するんです。自分より年上の人をマネジメントするのみたいな話になって。
でも、今、労働者全体の中間値が40歳を超えましたから、明らかに部下は年下だけっていう時代は終わってますからね。それに、雇用だけが働くっていうことではないわけで、フリーランスもあるし業務委託契約という形も普通になっている。そうやって、むしろ自由度高く自分の適性に応じて働くというのが自然でしょうね。

徳岡  「ライフシフト」っていう本の中で、リンダ・グラットンがこれからの3つの働き方を言っていて、1つがエクスプローラー、1つがインディペンデントプロデューサー、3つ目がポートフォリオワーカーと言うんです。
このポートフォリオワーカーって何かと言いますと、本業と副業だけじゃなくて、自分の時間をいろんなところに貼っていく…。
たとえ本業でもシュリンクしてある程度にしておいて、個人でやっていたり、うぇるねすでも働いたり、自分の時間をいろんな形で使ってポートフォリオを作っていくっていうそういう生き方なんですが、実はこれがこれから主流になっていくと思うんです。
とくに、高齢者にとっては親和性が高いと思いますね。ちょっとずつ稼げばいい。自分も楽じゃないですか。その鍵はさっき言ったように健康なんですよね。いろんなことをやっていかないと行けないから、相応の体力はちゃんと持っておいてということ。

下田  そう・・・100歳から見れば、70、80は洟垂れ(はなたれ)小僧っていう感じなんですね。だいたい何をやっても10年あったらかなりのプロになれるって言われている。70歳なら100まで3回はチャンスがあるでしょう。
もう1つはITだね。年をとったら記憶力とか筋肉が衰えるとかありますよね。でも、スマホとか自由に使えるようになると十分に補えるわけ。これは全然、普通の人より進んだ知識を得たり仕事ができるわけだね。だから、もっと高度な職もありますよって考えられるんですよ。

〜おわり〜